【進撃の巨人】孤立してしまうエレン

※最終話までのネタバレあり

 

 

 

私自身少しこだわりが強い子供だったので、こだわりが強い人を見るとなんとなく心の中のロジックがわかります。こだわりが強い人は自分を貫いて偉業を成し遂げる可能性がある一方で、妥協ができず他者とぶつかって孤立したり、こだわりすぎて何も成せないということもあります。

— Dai Tamesue 爲末大 (@daijapan) 2022年12月17日

(ツイートが消えた時のために引用しておきます)

 

為末さんのこのツイート読んで、ふとエレンのことを思い出しました

てか、今のちゅねって、日常のなんでもかんでもが【進撃の巨人】に繋げて考えてしまうところがあってさ(^^;)

あれはこういうことだったのか!

なんてことが多々あり

 

自分が未熟なために上手く言語化できていないものについても、他の方が他のことで的確に言語化していたりすると、「ああ、これだ!」と反応してしまいます

何が言いたいかというと、為末さんのツイート読んで頭の中でエレンのことが整理できたというか

過去に色々書いてきたけど、ちょっとまどろっこしかったな、と思ったのでした

 

 

 

安楽死計画はダメ、絶対にダメ

 

エレンの主張って簡単に言うと、自分たちがこの世に生まれてきて何が悪い、ということだと思う

エレンの言う「自分たち」とは、巨人になれる種族である“ユミルの民”のことです

その対極にあるのが兄ジークの安楽死計画で、そもそも自分たちなんて生まれてこなければ、ですよね

 

「駆逐してやる」

「この世から一匹残らず」

とエレンは言っていましたが、壁の外にいる自分たちの敵は「巨人」しかいないという認識だったので、当初は「とにかく巨人をぶっ殺したい」だった

けれども真実が明るみに出て以降は、エレンの中で「オレたちの敵」=「巨人」ではなくなっているんですよね

90話『壁の向こう側へ』

「無垢の巨人は、楽園送りにされたオレたちの同胞」

 

エレンの目的は「パラディ島の人々を守ること」に絞られました

世界が開かれてからのエレンの葛藤は、パラディ島以外で暮らす同胞の命をどうするか、ということに尽きたと思います

123話『島の悪魔』

 

このエレンが、諸悪の根源を「巨人の力」と考えて、巨人の力を消し去ることを望んでいたとは思えません

選択権をミカサに譲るなんてことも、ちゅねはありえないと思うなぁ

 

といっても最初のころはちゅねも、エレンは巨人の力を消したいと考えていると思っていたんだけど

巨人の力はいいとしても、13年の寿命というのがさー、気の毒に感じてしまって

 

でも誰かが「巨人の力を「悪」と考えるのは差別だ」というようなこと書いていたんですよね

「巨人の力を消し去ってめでたしめでたし」なラストに不満を持っていた人だったのだろう

悲痛な叫びを挙げているような印象があって、それ読んで「確かにそうだな…」と目からウロコで、そこから自分の考えを改めました

 

だから巨人族である“ユミルの民”から生殖能力を奪い、ゆっくりと穏やかにこの世から消滅する計画を企むジークには「座標」を取らせてはいけないという固い決意がエレンの中にあった

誰が何と言おうとも自分が間違っているはずがない

これだけは譲れない

 

安楽死計画はダメだ!!」

「これを肯定する理由があってたまるか!!」

 

127話『終末の夜』

ハンジはエレンの逆バージョンですが、気質として二人は似た者同士だったのではないか

 

ハンジ(リヴァイ)の号令で集められた仲間たちって、エレンの場合でいうフロック達イェーガー派に当たるんですよね

私設団体っていうのかな

それが公に認められたり、クーデターなどで実権を握れば公設になるんだろうけど

 

エルヴィンの場合は公設団体の中で、こっそりと私的なことをやっていた

そう考えると、ハンジって地鳴らしを止めるための仲間集めの時に、「これは私的な目的」「調査兵団は公設じゃなくなった」と律儀に告げているので

これをどう捉えるか…

 

ハンジの対はサネス、リヴァイの対は…

 

ハンジって、ほんとに作中随一のマトモで情もあって信頼のおける人物(のように見えるんですよね)

けどハンジの対としてサネスを置いているってことは、サネスもまたハンジのようにマトモで情があって信頼できる人物なのだと思います…(-_-;)

サネスはただ悪役として登場したから悪者に見えるだけで、やっていたことはハンジと同じだったはず

 

リヴァイの対として描かれている人物が、なんとグロス曹長なんだよ

あんな悪趣味なことやってるけど、きっとかなり家族や仲間想いで優しい人ですよ

リヴァイと同じで(^^;)

じゃあなんでグリシャやフェイにあんな惨いこと出来るのか、それはエルディア人を同じ人間だと思っていないから

リヴァイも、自分と同じ側でなければ、人間も巨人もバシバシ殺してる(たぶん楽しみながら)

27話『エルヴィン・スミス』

 

56話『役者』

87話『境界線』

 

「あぁ 部下の仲間のヒストリアを、部下たちの前でシバきあげたのも教育だ」

「おかげで俺の部下達は立派に育ったよ」



59話『外道の魂』

 

60話『信頼』

 

 

 



138話『長い夢』

「エレンは口の中にいる」って、リヴァイが言ってる可能性もあったり?

(ちゅね考察では、リヴァイもエレンが口の中に居るのを知ってますので、リヴァイでもミカサでも、ふたりでもOK)

 

 

リヴァイとグロス曹長の共通点は、自分は正しいことをしていると信じきっていることかなーと思う

…ほんと、こういうことする作者はエグいと思いますけど、かつて作者も作品などから同じ思いをさせられた体験があり、それをよく覚えているのかもしれない

人は当たり前のように自分の方が正しいと思い込んでいて、いとも簡単に誰かを踏みつけている、みたいな?

しかもそのことに無自覚なんですよ

 

ええと、ハンジについては、後日別記事にてしっかりやります(;^ω^)

ただ、自信がない!

 

ハンジに一番似ている人物って、なんだかんだ言ってダイナなんじゃないかと思うのだ

ダイナは一見グリシャ一筋のように見えるので「女」の特長が強くて惑わされるけど、王家の生き残りとしての誇りとプライドを持ち、復権を夢見た人だ

強く夢見た人だ

たまたまグリシャと出会い(引き合わされ)、波長があってしまったから結婚して、たまたま男女だったから子供を為しただけだ

 

というようにダイナを見ることができたのも、ハンジと重ねて考えたからなんですが

 

エレンのこだわり

エレンの話に戻ります

世界は、巨人になることが出来る種族は滅ぼすべきだと言う

だから自分たち“ユミルの民”が生きるためには世界を滅ぼすしかない

というのが、要するに為末さんのツイートでいう所の、エレンのこだわり

 

だがエレンが救いたい“ユミルの民”全員がパラディ島に集められているわけではない

世界各国にラムジー達のような“ユミルの民”が散らばって暮らしている

全員を救うことは出来ないが、ジークの安楽死計画が実現してしまっては“ユミルの民”は滅亡に向けてまっしぐら

 

エレンの中で、『世界で暮らしているユミルの民』の命をとるか、安楽死計画を阻止することを取るか、二択になっていたかも?(^^;)

その二択で安楽死計画を阻止することを選んだために、ラムジー達に犠牲になってもらった

 

123話『島の悪魔』

世界の方で暮らす“ユミルの民”は、エレン達パラディ島で暮らす“ユミルの民”だけを悪者だと主張し、自分たちだけは救ってくれと訴える

100話『宣戦布告』

タイバー家もそうですよね

同じ人種なのに、自分たちだけ助かる道しか考えない

タイバー家にしても、世界側につくか、パラディ島側につくかの二択だったら、どう考えても世界に守ってもらった方のが有利だという考えなんだろう

エレンはこの時に完全に失望…したんですよね?(世界側にいる“ユミルの民”に)

 

グリシャは、自分の娘を殺されたのにも関わらず、殺した相手にヘコヘコする父親の姿を見て眩暈のするような憎しみを覚えた

 

あの時の父は、きっと今の自分と同じ理由で失望したのだと、エレンは父の失望を理解した

エレンの場合、「父」がヴィリーで、「この男」が世界(ヴィリーの演説聞いて拍手している人達)かな?

グリシャは壁の外にいる人間が、人を人と思わないケダモノであることを知らずに、妹を外に連れ出してしまった自分の愚かさを呪っていた

もし知っていたら絶対に妹を連れて外へなど行かなかった

絶対に妹の手を離さなかった

 

父の痛みの記憶はエレンの教訓となる

 

そして自分を貫いて、他者とぶつかって、孤立した

 

父グリシャがジークに「エレンを止めてくれ」と頼んだ時のエレンの心境は

「何でわかってくれないんだ!」

ってことだ

 

「“ユミルの民”なんて生まれてこなければいい」という兄の主張は間違っている

(これは、ちゅねもそう思う)

「オレ達にはこの世に生まれてくる自由がある」

(たしかにそう)

だから絶対に自分の方が正しいのに!!!

(うん)

 

だから世界を滅ぼさなきゃならない

(いや、ちょっとそれは極論じゃぁないのか…)

 

先手必勝!先制攻撃!!

(待て待て待て待て)

 

 

 

エレンの場合、これを3度繰り返す

 

一度目がレベリオ襲撃で、エレンの行動をハンジやリヴァイが諫めた

それにエレンは反発して牢を脱走

“ユミルの民”、いやパラディ島の人々がこの先も存続していくために、世界を滅ぼすことにこだわる

 

二度目が地鳴らし

グリシャがエレンの行動を止めるようにジークに頼んだ

それにエレンは反発して、鎖を引きちぎって始祖ユミルにまっしぐら

“ユミルの民”、いやパラディ島の人々がこの先も存続していくために、世界を滅ぼすことにこだわる

 

3度目が地鳴らしを止められた時

ジャンには「死に急ぎクソバカ野郎がああああああ」と言われようが

ライナーには力で抑え込まれようが

アルミンには「さよなら、エレン」と言われようが

それらすべてにエレンは反発して、みなを無垢の巨人にしてしまう

“ユミルの民”、いやパラディ島の人々がこの先も存続していくために、世界を滅ぼすことにエレンはこだわる

 

 

「何で!?」

「何で誰もわかってくれないんだ!?」

 

 

 

……でもエレンにはリヴァイの教えがあるんですよ

25話『噛みつく』

リヴァイは何の理由も無くこう言ったのではなく、エレンが18話『今、何をすべきか』で「調査兵団に入って、とにかく巨人をぶっ殺したいです」と言ったからですよ

そういうエレンを信じてる(自分に都合良く)

 

26話『好都合な道を』

56話『役者』

 

「あぁ 部下の仲間のヒストリアを、部下たちの前でシバきあげたのも教育だ」

「おかげで俺の部下達は立派に育ったよ」

 

( ̄▽ ̄;)

エレンがああなったのはリヴァイの教育の賜物

 

105話『凶弾』

69話『友人』

 

リヴァイの理想の人は、愛想のねぇ死にかけのガキに手を差し伸べてくれる人物です

リヴァイはこの時の汚いエレンを見て、エレンを絶対に見捨てないと決めた(ハズ)

たぶんリヴァイはイェーガー派に出入りしていたと思います

ジークを森で見張っていた部下たちに差し入れられたワインも、もしかしたらリヴァイが部下たちを労おうとしてイェーガー派に言付けして横流ししてもらった可能性がある

そうだった場合のリヴァイの罪は思っていたよりも重いかも

 

(ケニーも中途半端な人間だったから、結局リヴァイと対立関係になってしまったし)

(そういうところまで一緒だった可能性ががが)

 

エレンはエレンで、リヴァイは絶対に自分を信じてくれてると思っていた

まさかフロック達がリヴァイを始末しようとしていたなんて想像もしてなかっただろう

(^^;)

 

エレンの問題点は、自分の目的を達成するために巻き込まれてしまう人の立場や気持ちをまるで考えないことなんですが

自分の気持ちが一番なので、究極、そのために他者が犠牲になってもいいと思ってる

というか、正義のためには止むを得ないって考えか

それでいて孤独は嫌なわけですよ

自分をわかってほしいと思ってる

わかってほしいと思う対象がいる

その対象者は、同じ志を持って行動していた人物だ

グリシャであったり、ハンジであったり、リヴァイであったり

その人たちから否定されると、エレンの中で失望が生まれ、逆上する

自由の翼』にはエレンの理想が込められており、自分を否定することは、『自由の翼』という枠からはみ出すことである

 

大好きな人達には、自分と同じ方向を見てもらいたいもの

エレンの場合は、同じ方向を見ていると信じていたからこそ、調査兵団を選び人類の勝利のためにつき進んだ

んー、ちゅね、ちゃんと言い得てる?

本当なら、当たり前にその空間があり、自分がいて、あの人もいる

仲間がいる

エレンの理想です

 

この世で一番それを持っちゃいけない人物

 

 

ごく稀な人を除きこだわる人にとって大事なのは、
・中心をかぎ分けてそこにだけ注意を向ける
・相手を絞り、その人の意見はきちんと聞く
・自分はいつか死ぬことを常に意識し、それは本当にこだわる価値があることなのかを問う
ではないかと思います。

— Dai Tamesue 爲末大 (@daijapan) 2022年12月17日

(ツイートが消えた時のために引用しておきます)

 

相手を絞り、その人の意見はきちんと聞く

たぶんエレンはリヴァイに絞った

でも、リヴァイって、かなりエレンの理想とは、かけ離れた人物なんですよね…

 

 

アニと同じで、人の命に価値があるとは思っていない人だ

そして調査兵団を抜けようとしてた(たぶん)

 

エレンの理想にピッタリ当てはまる人は、リヴァイでなくハンジだったと思う

エレンはハンジに絞って、ハンジの意見をきちんと聞くべきだったんですよ

 

いい案が出せたかは分からないけど、少なくともハンジはヒストリアを犠牲にすることには反対だったわけだし

王家でなくても始祖を操れる方法を、4年前にハンジに打ち明けるべきだったんじゃないかな

4年前だったら、ヒストリアを巨人にする注射だって壁内では消滅していたんだから

 

でも、まあ、男の子として、リヴァイという外側に憧れちゃうのも仕方ないんだろうなあ…

リヴァイがカッコよく見えるのは仕方ないよね

(といわれてしまうのは、ハンジも悔しいだろう)

 

ああ、そうか

『白夜』でエレンの言い分を聞き入れてくれたのがリヴァイで、ハンジはエルヴィンを生かすべきだっていう主張だったからか…

ヒストリアのことも、その時が来れば、情ではなく実を取る人と判断してしまったのか?

 

4年という年月を無駄にした結果、失望したのはエレンではなくハンジのような気がする

エレンは、ハンジを失望させてしまった

 

119話『兄と弟』

50話『叫び』でも、ライナーが同じことを思っている

これについても考えてみよう

 

なぜライナーが断言できるかっていると、エレンの心の中のロジックがわかったから、ですよね

逆にエレンにも、あの日あの時にエレン達の暮らしていた街の壁を破ったライナーの心のロジックがわかった

エレンがライナーに真っ向勝負を挑むのも、ライナーがセコイ手を使ってこないという確信があったからだよね?

相手がそうだと分かっているから自分もそうする、という話だよね?

 

エレンとライナーの間だけの話で、わかり合うもの同士の暗黙の了解で

果たして本当にわかり合っていたのか、ちゅねにはわからんが

 

向こうが捨て身だから、こっちも捨て身でいくということか?

ちょっとちゅね、よくわかってないかもしれん(^^;)

 

ライナーの方は自分では気づいていないようでしたが、エレンにはすべてお見通しだったという感じはする

無自覚で、エレンと真っ向勝負しかしていなくて、「エレン、死ね、死んでくれ、俺達のために、お前の負けだ、もう悩まなくていい、辛いだろ、俺にはわかる、眠れ、もう苦しむな、死ね」

あ、なんか、面白くなってきた(^^;)

 

なぜエレンがこの世で一番それを持ってはいけないとライナーは思ったのか

まずエレンが、巨人の恐ろしさを目の当たりにしているのにも関わらず兵士になり調査兵団に入ることを目指していた

 

何かを成し遂げたい

巨人を一匹残らず駆逐したいという思いを抱いていることを知っていた

 

あと、アニキ面したい、というのが痛いほど伝わってくる

こ、これだ…

 

でもライナーは、エレンの駆逐したい巨人が、自分たちと同じ“ユミルの民”であることを知っている

なぜエレンが一匹残らず駆逐したいのかといえば、壁内の人類を食おうとしているからで、そのせいでエレン達は壁の中に閉じ込められている

エレンは「巨人」と言っているが、この世界の真実がわかった時にエレンが敵視するのが世界そのものだということが、ライナーには分かっていたんだろう

そして仮にもエレンが「それ」を持ってしまったら、エレンはアニキ面して地鳴らしを起こすことをライナーは知っている

97話『手から手へ』

エレンにアニキ面するライナーには、それが我が事のようにわかるからだ