※最終話までのネタバレあり
これのつづきです
ミカサについてのおさらい
エレンを殺しに行くのに、なぜミカサはマフラーを巻いたのか
この矛盾したミカサの行動を考察します
ミカサは9歳の時に、あの山小屋で人を殺しました
人殺しという行為を、悪いことではなく「いいこと」「仕方のないこと」としてくれたのがエレンです
あの時の状況から、まとめてみると
ミカサとエレンは、自分たちが生きるためには目の前の男を殺さないといけなかった
そいつを殺さなければ、自分達が死んでいたのだから、殺して何が悪いのか
という感じかな?
遅れて来たグリシャはエレンに「(子供が)危険なことをするのはいけない、逆に殺されていた可能性の方が高い」「子供は危険なことに首を突っ込まず、憲兵に任せておけばよい」ということを諭そうとしますが、対するエレンは「それじゃ間に合わなかった」「ミカサを助けてあげたかった」と言って自分の主張を引っ込めなかった
そうして自分たちに置かれた状況と過程を、エレンが強く肯定してくれたおかげで、ミカサは自分がエレンに助けられたことと、助かるために人を殺してしまったことに過剰な罪の意識を持たずに済んだ
ひとえにエレンが傍に居てくれたおかげです
家族を失い、初めて人を殺し、この先どうしていいのかわからなくて心細く、寒くて震えていたミカサのことをエレンは思いやり、自分が巻いていたマフラーを外して(エレンは寒くなり)、ミカサに巻いてくれた(ミカサが暖かくなる)
グリシャも、両親と帰る家を同時に失ったミカサが不憫に思い、うちに来なさいと招き入れてくれた
こうしてミカサは新しい家族を手に入れることができた
以降ミカサは家族を守るためには暴力を奮うこと、そのための殺人は赦される(エレンが赦してくれる)という認識になった感じだろう
それこそが唯一この残酷な世界を生き抜く術なのだ
(エルヴィンの詐欺演説をちょい加工)
エレンのマフラーは、常にエレンをそばに感じるためのミカサにとっては大事なもの
信仰の証のようなもので、それを身につけていれば、いつでもエレンの加護を感じることが出来る
パワーストーンとか、カジュアルですが、身につけるのを忘れて外出してしまうと、一日中気が気じゃなくなるような、これって身に覚えがある人は少なくないハズ
ミカサの場合のマフラーは、それのかなり深刻なバージョンで、日常の行動すべての基盤になっている状態だと思う
ミカサのエレンに対する気持ち、マフラーを巻いてもらった意味は、信仰心レベルまで掘り下げないと理解できないのではないか?と思いました
もしくは依存、ミカサがエレンに執着する根源の部分
ごくごく一般的な男女間の感情で考えてしまうと、なんでそこまでエレンに固執するのか不思議でならないですよね
ミカサがウザく感じてしまうし、「ちょーくだらねー」と切り捨ててしまいかねない(←ちゅねのこと)
エレンの教義は「勝てなきゃ死ぬ、勝てば生きる、戦わなければ勝てない」「戦え戦え」ですので、ミカサがふと殺すことを躊躇してしまう時などに役に立ってくれます
106話『義勇兵』
とはいえ、さすがにエレンの身勝手な作戦強行であるレベリオ襲撃で、あきらかに無関係な市民を巻き込み犠牲者を出し、サシャまで死んでしまった時、ミカサのエレンへの信望はぐらぐらと揺らいだ
ミカサにも大切だと思える仲間が増え、エレンとアルミンだけだったあの頃とは状況も環境も変化していたことが一因としてある
マフラーだけでは心もとなくて、だからエレン本人に早く帰ってきてもらって、「仕方ないだろ、ああしなければオレたちの方が殺されていたんだから」というようなことを強く言ってもらい、安心したかった(はず)
というわけで、一時期マフラーを外していた時のミカサの行動が、本来のミカサを知るひとつの指針になる
127話『終末の夜』
129話『懐古』
仲間達を守るためであっても、これ以上エレンに虐殺なんてさせたくない
躊躇えば仲間が死ぬ
ミカサがエレンを殺した理由は主にこの二つでしょう
でもミカサが人を殺せるのは、人を殺しても平気でいられるのは「勝てなきゃ死ぬ、勝てば生きる、戦わなければ勝てない」「戦え戦え」というエレンが存在しているからです
勝てなきゃ死ぬ、勝てば生きる、戦わなければ勝てない
誰に勝てないと誰が死ぬのか?
→エレンに勝てないと、みんなが死ぬ
だからミカサはエレンを殺さないといけなかった
みんなを守るために
でもミカサにはエレンを殺すなんて出来ない
それでもエレンを殺さないといけないと思い、ミカサは強く自分の背中を押してくれるもの、「戦え!戦え!」という教義が込められたエレンのマフラーを巻く必要があった
マフラーを巻いたことで、ミカサは戦闘モードとなった
エレンの教え通りに、勝つため生きるためにエレンを殺したが、殺してしまったらエレンがこの世から居なくなってしまいます
エレンが居ないと、ミカサは勝つために殺すことを良しとしてきた残酷な世界で生きていくことが出来ません
77話『彼らが見た世界』で、ライナーがマルコを殺すことを決めて、ベルトルトとアニに協力を求めたにもかかわらず、巨人に食われて死んでしまうマルコを見て「なんでマルコが喰われてるんだ…」という状況に似ていると思います
ミカサがエレンの居場所をあかす=殺す決断をして、リヴァイ、アルミン、ファルコに協力を求める
『彼らが見た世界』というタイトルも、ミカサが覚醒するエピソードの『少女が見た世界』というタイトルと対になっていますし
エレンを殺した後で、ライナーのようになった可能性は大
精神のバランスを崩した?ミカサ
ミカサの精神状態が46話『開口』のライナーと同じなのではないかと思い、
46話と最終話を並べて読みました
アッカーマンであるミカサには記憶改竄が効きません
でも最終回を読むと、ミカサも記憶改竄されていて、記憶が戻った、という風に一見読めてしまいますよね
アッカーマンであるミカサには記憶改竄が効きません(強調)
これは69話『友人』でウーリが始祖の力でケニーの記憶を消そうとしたが出来なかったという描写があり、確定している設定です
全知全能の力を手に入れたエレンはアッカーマンであるミカサの記憶をも改竄することが可能になったという風に、原作の設定を捻じ曲げてはいけません
アッカーマンのプチ歴史
100年前に、大陸を捨てて壁内に籠る際、壁内に籠ったユミルの民に一斉に記憶改竄が施されました
壁外のユミルの民には記憶改竄はされていません
始祖は、壁内、壁外とわけて記憶改竄をしている
まあ、一斉改竄だとしても、外の世界の場合はすぐさま洗脳は解けるでしょう
壁内のユミルの民以外には当然ながら記憶改竄は効かないが、ユミルの民でも唯一例外としてアッカーマン一族には記憶改竄がきかないのを知っていたので、王はアッカーマン一族を側近にした
が、ある時にアッカーマン家(+東洋の一族)が王のやり方に反発したために、迫害されることになった
アッカーマン一族の特性は王家が共有していた共通認識で、壁に籠る前(不戦の契り以前)から王家を守る一族だっただろうと思われます(そのまま連れて行った)
ミカサは始祖の記憶改竄の影響は受けないけれども、でもその事実をミカサは知らない
アルミンとミカサの会話、噛み合っていませんよね?
なんだかおかしい
噛み合っていないながらも、最後だけ息が合い、別れるふたり
読者としては読みにくく分かりづらいと思いながらも、これが正しく提示されたものだという認識でいるから、どうにか補正して読もうとしちゃうよね(^^;)
ちゅねは確か、ミカサは島に帰りたいけど帰る方法が分からないからアルミンに「じゃあ僕も行く」と言ってほしい
でもアルミンは意地悪してスッとぼけていると解釈していました
「帰れるもんなら一人で帰ってみろよ」みたいな
でもアルミンはミカサがおかしくなってしまったことに気付いたけれども、ミカサが気の毒で本当のことが言えない
どうにかミカサと会話を合わせようとはするも、当然ながら噛み合わない
という状況なのかもしれないです
わかりやすくしてみます
ミカサ「アルミンも記憶が戻ったんでしょ?」
アルミン「???…あぁ…聞いたよ、ミカサがもたらした選択の結果が…巨人の力をうんたらかんたら~」
ミカサ「?」
「(なんかアルミン意味わかんないこと言ってる(昔からだけど)」
「もう…行くね」
と、こんな感じなのではないだろうか?
ミカサは、いつもエレンとアルミンと一緒にいたが、ふたりの会話の意味がわからなくても、とくに意味を訊ねることなく隣で聞いていましたよね
72話『奪還作戦の夜』
別れ際のミカサとアルミンの会話がイマイチ分かりづらい理由は
そもそも噛み合ってない会話だったからです
(๑•̀д•́๑)
噛み合っていない会話なんて描くはずがないという先入観を使ったトリックです
(๑•̀д•́๑)
では「エレンが私達に会いに来てた時の記憶」というのがなんなのか
たぶん112話『無知』で、エレンがミカサとアルミンに会いに来た時のことを言っていると思います
あの時のエレンは、ミカサにもアルミンにもひどいことを言い、アルミンは怒りのあまりエレンに殴りかかりましたよね
116話『天地』で、ジャンがこんなこと言ったのが絶対に悪いよね(^^;)
ミカサもそれで希望持ってしまった所は大いにあると思う
ここ、ちゅねがイラついたところ(笑)
エレンの行った大量虐殺の好意的な受け止め方は、
これ以上のものは考えられないですよね(^^;)
エレンは自分が嫌われるためにワザと私達が傷つくようなことを言い、私達がエレンを攻撃するように仕向けていた、とミカサも思い込んだ
エレンは本気で世界を滅ぼそうとしていた、オレを止めないと世界が滅ぶと本気だった
だから私はエレンを殺さなければならないと決意して、エレンを殺した
あの時アルミンがエレンに殴りかかったように
アッカーマン以外のユミルの民は始祖の力で記憶改竄されましたが、ミカサの場合は奇しくも同じ内容の「英雄エレン物語(仲間を思うあまり悪役を買って出た優しいエレン)」を自家製造してしまっていた、ということです
わかりづれー(^^;)
それでは、いまふたたび、この読者を混乱させるミカサのセリフについて考えましょう
「記憶が戻った」というから、ややこしいんです
てか、わざと混乱させるような言葉選びをしているのだと思いますが
「記憶が戻った」を、「記憶を思い出した」に置き換えてみましょう
思い出した記憶は112話『無知』、エレンがミカサ達に会いに来た時のことです
「記憶を巻き戻してアルミンも思い出したんでしょう?」的な
エレンが何の意味もなくあんなことをするとは思えない
何かそこに…エレンの真意がある
アルミンも…思い出したでしょ
エレンはわざと嫌われること言って、アルミンはそれに乗せられてエレンに殴りかかった
みんなを無垢の巨人にしたのも、あの時と同じこと
私にエレンを殺す決意をさせるため…
エレンは私達のことを想っている
ツッコミ役が不在
ミカサとアルミンの会話が、かなり分かりづらいのは、ひとえにツッコミというものが不在しているからです
それでは46話からエレン君と104期ユミルさんに来てもらいましょう
あとボケ役にライナーにも来てもらいました
「ミカサが……何かマズイこと言ったか?」
「そうだろアルミン」
「何か知ってんなら」
「いい加減…黙ってないで何とかしてやれよ…」
(……ミカサ…君は)
(歩いて島には帰れないだろ)
(なにより僕らは島の英雄エレンを殺した裏切り者なんだから…)
(島に僕らの居場所なんてないよ)
「おかしいと思ったよ」
「命懸けでエレンのことを守っていたミカサが、自らの手でエレンを殺すなんてな」
「本来エレンは敵国とはいえ、そこに住む関係ない人や子供を巻き込むような人じゃない」
「誰よりも仲間を想い大切にしてきたのがエレンだったが、調査兵団を離れマーレ側で負傷兵を演じて生活してしているうちにエレンは変わり、どちらが本来のエレンなのかわからなくなった」
「いや…もしくは、本来ミカサはエレンを守ることを目的とするエレンの家族だったが」
「調査兵団の兵士を演じて生活するうちに、どちらが本来の守るべき家族かわからなくなった…」
「いや…もしくは罪の意識に耐えられず」
「心の均衡を保つため無意識にエレンは」
「突き放した自分らを、エレンを討ち取り人類を滅亡から救った英雄に仕立てあげるためだと逃避し…そう思い込むようになったんだ」
「その結果、心が分裂し、記憶の改竄」
「話が噛み合わなくなることが多々あったって様子だな」
「アルミンの呆れ顔を見るに…」
「みんな大好きミカサちゃんに…(以下略)」
アルミンとミカサの話が噛み合わなくなるってのは、地鳴らしが起きてからかな?
125話『夕焼け』
すべての壁を崩壊させた地鳴らしを目の当たりにしたアルミンは、さすがに許容範囲を超えたと判断したのに対して、ミカサはまだエレンの残虐さを受け入れようとしない
(どうにか理由をつけて「仕方が無かった」に帰結させようとしている)
(……やはりジャンが悪いよね?(^^;)
118『騙し討ち』
これまでエレンと喧嘩ばっかりしてたジャンが、こんなこと言っちゃうんだもんだから(^^;)
まあ……ジャンが悪いわけじゃないんだけど、あのジャンが言ったからこそ、ミカサも望みを持ってしまうのもわかる気がする
アルミンもミカサに希望を持たせるようなこと言ってたからなー
でもアルミンは、123話『島の悪魔』で完全に切り替えてしまったんだよね
ミカサは切り替えることが出来なかったどころか「もしあの時私が…」と罪悪感さえ覚えた
その後は、エレンを止めるために島を裏切り、かつての仲間と殺し合いまでして先へと進むうちに、エレンを殺さないといけない覚悟が固まっていく
ミカサ以外は
136話『心臓を捧げよ』
エレンを殺すことを最初に言い出すのはリヴァイだけど、ミカサが絶望するのはジャンがこう言った時
ミカサの希望の最後の砦が崩れた(^^;)
すぐさまアニーがナイスフォローしてくれたのが良かった
そうしてみんながミカサを気遣ってくれたから、ミカサもそれ以上はみんなを困らせるようなことは言わなかった
この時のミカサは、比較的安定している印象です
でも地上に降りて、マーレ組が家族と再会して喜び合っている光景を目にした時に疎外感に襲われ、またもやエレンのことを意識するようになってしまう
ミカサの心は、またしても不安定な状態に逆戻り
ジャンとコニーが、このあと無垢の巨人化してしまいますからね
念のために…
(これはごっそり除外してもいいです)
エレンを殺した後で、ミカサとリヴァイのやり取りがあり、始祖の力を使って記憶改竄したのはリヴァイであるという見方を、ちゅねはしております
なので、ミカサがどこまで精神のバランスを崩しているのかってのは、その考察が有る無しでだいぶ変わってきます
考察有りの場合、ミカサが「きれいなエレン」を作り出したのはほんの一時で、リヴァイとのやり取りの中でミカサは正気を取り戻している
みんなに記憶改竄が起きていることをミカサは知っている状態なので、みんなの中の「きれいなエレン」を壊さないように配慮しながらアルミンと会話している、ということになります(^^;)
けれども、そうなると逆に、死を望んでいなかったエレンを殺してしまったという事実が重くのしかかってきて、ミカサはその罪にも耐えられず、結局は「きれいなエレン」というものに逃げこんでしまいます(パラディ島に帰った3年の間に)
考察無しの場合
最終回でのミカサとアルミンのシーンは、記憶改竄でエレンが「きれい」になったことで、ミカサは殺したエレンを手放せなくなり、生首を愛おしそうに抱きしめ、あの場所に埋葬するために徒歩で帰ろうとする憐れな人になってしまったのだとアルミンは判断
ミカサがおかしくなってしまうのは当然のことだと、アルミンはミカサの後ろ姿を見ながら涙を流したが、自分のやるべきことをやらねばと前を向いた
という感じになります
ミカサのことは、あとで回収しようとしてたんだろうと思う
分かりづらい情報の整理
「ミカサがもたらした選択の結果が」
「巨人の力を、この世から消し去ることになる」
これは、よくよく最終回を読むとアルミンの発言以外は、どこにも書かれていない情報です
冒頭のエレンとアルミンのやり取りの中でも「巨人の力が消える」とは一切書かれていない(いきなり出てきた情報)
アルミンはミカサに話を合わせるために、エレンが昔言っていた「巨人をこの世から一匹残らず駆逐してやる」から想像して言ったことだったんじゃないだろうか
アルミンのドヤ顔断言で、読者を間違った方向へ誘導する描写はいくつか存在します
アルミンの言う通りのこともありますが、アルミンは何回かに一回は失敗しているのも確か
アルミンはトリックスター的存在でもあると思う
ミカサがひとりで、徒歩で、生首を抱えて、パラディ島に帰ることはどう考えても不可能です
海を渡れたとしても、その先の手段がありません
ここから、巨人の力は消えていないということを導き出せ、みたいな?(^^;)
ミカサがどうやって島に戻ったかは無理して考えずに、ファルコに運んでもらったというのが一番単純で合理的だと思います
アッカーマンは始祖の記憶改竄の影響を受けないという事実は、ロッドとケニーが誰にもそれを話さずに死んでいるので、二人が死んで以降は読者だけが知っている事実ということになります
ややこしいよね(^^;)
ちゅねもついうっかり忘れてしまう
作中で出てくる記憶改竄は二種類
始祖の力と、ライナーのような精神的なもの
始祖の力の方は、ユミルの民の記憶を一斉に改竄することができる
進撃の巨人の能力は、未来の継承者の記憶を覗き見ることができるというもの
グリシャの口から語られることが確定事項であり、ジークが語ったことはただのジークの予想でしかありません(エレンは否定も肯定もしていない)
エレンの過去干渉については、ジークも過去グリシャに抱きしめられているのが干渉に当たるので、進撃特有の能力というわけではない
始祖ユミルは137話『巨人』で、「力を貸してくれ」と言ったジークにも従っています
終尾の巨人とも違う形態のエレン巨人
ジークが死んだことで、エレンが始祖の力を使えなくなった状態での巨人化なので、形態としては「進撃の巨人」ではないか?
光るムカデとも分離した状態です
(※エレン全知全能説を崩すのが目的です)